2024年度 第5回びんごデジタルラボイベント『DIGILAB15』を実施しました ~「中小企業の未来を創るデジタル化の成功事例」~

2024年度 第5回びんごデジタルラボイベント『DIGILAB15』を実施しました

2025年1月22日(水)に「2024年度 第5回びんごデジタルラボ『DIGILAB15』」を開催しました!

今回の開催テーマは「中小企業の未来を創るデジタル化の成功事例」です。

開催概要

日 時 2025年1月22日(水)15:00 ~16:30
開催方式 オンライン(Zoom)と現地参加のハイブリッド開催
参加者 42名

基調講演として、先駆的にDXの活用を進めている竹原商工会議所 田中雅一さん、地元企業の取り組み事例紹介として、山陽パッケージシステム株式会社 山口裕輝さんと株式会社サトシゲ 佐藤航平さんにご登壇いただきました。
オンラインと現地参加のハイブリッド形式で開催し、多くの方にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

登壇企業紹介

会社名 本社所在地 事業内容 企業HP
竹原商工会議所 広島県竹原市 企業経営支援
地域振興活動
セミナー・相談会開催
http://takecci.net/
山陽パッケージシステム株式会社 広島県福山市神辺町 包装・物流産業資材の製造・販売
CAD/CAMシステムによる包装・物流に関するコンサルティングサービス
https://www.sanpake.co.jp/
株式会社サトシゲ 広島県福山市南手城町 木材製材・販売、木材塗装、溶接 https://satoshige.jp/

基調講演

竹原商工会議所 事務局長 田中 雅一さんより「デジタル化の先を見据えた取り組みと支援事例について」のご説明をいただきました。

1 デジタル化の現状と課題

全国の中小企業の約7割が人手不足を感じている中、デジタル化を通じた生産性向上は急務となっています。しかし、デジタル化の推進にあたって「旗振り役となる人材の不足」や「従業員のIT知識不足」といった人材面やコスト面の課題が大きな障壁となっています。また、コロナ禍でデジタルツールの普及が急速に進んだものの、その効果を具体的にイメージできないという理由から、現状として必要性を感じていない事業者が多くいます。

2 竹原商工会議所の取り組み

2011年の組織改革を契機に、竹原商工会議所でタブレット端末を導入しました。このタブレット導入は巡回指導における効率化を大幅に向上させました。タブレットを活用することで職員は迅速に相談者のニーズに対応できるようになり、相談指導件数の増加を実現しました。さらに、2017年からはモバイルPOSレジを導入し、その後もクラウド勤怠管理システム、文書管理システムなど、デジタルツールの導入を本格化させていきました。

3 会員事業所への支援事例

商店街の方を対象にタブレットを導入し、Wi-Fiスポットを設置しました。タブレットの操作研修など勉強会を開催して、会員事業所の皆様のスキル向上と積極的な導入を促しました。各店舗のレジデータや会計ソフトの初期設定のサポートも行いました。 デジタル化による恩恵で、今までできなかった日々の売上や経理の状況をリアルタイムで確認でき、適切な経営判断が迅速に行えるようになります。飲食店向けにはメニューのオーダーシステムやキャッシュレス決済、POSレジ等の導入支援だけでなく、SNSを活用したマーケティング支援も行っています。また、独自の取り組みとして、経営者の了承のもとで会計システムのアカウントを共有させてもらうことで、その事業者の日々の売上状況や経理状況について細かく見ることができ、原因の把握から的確な指導につなげ、その事業者にあった効果的な支援を行うことができます。

4 産業支援機関としてデジタル化に取り組む意義

デジタル化のメリットは、ペーパーレス化やデジタルデータの管理による紙や郵便・保管コストの削減できること、クラウドサービスを利用することにより必要な人が必要な時にデータへアクセスができること、業務プロセスの効率化により業務時間の削減や残業時間の削減が期待できることです。このメリットを活かした支援効果は、経営状況をリアルタイムに可視化でき、事業者と支援者が本質的な経営課題を共有できることになり、解決に向けた迅速な対応が可能となります。そして課題が明確になれば、経営者が自発的に行動できるようになり、支援者としても「伴走から自走へ」導くこともできます。また、事業者と支援者どちらか一方ではなく、「双方で」デジタル化を進めることが、より双方の業務効率を向上させるポイントです。

事例紹介 ①

山陽パッケージシステム株式会社 本社工場 営業部営業課 主任 山口 裕輝さんより「デジタル化によるリアルタイムの予定共有」についてご説明いただきました。

1 従来の課題

以前までは情報共有の方法としてホワイトボードが使用されていましたが、ホワイトボードは会社に1つしかなく、別の階にいる社員は確認や書き込みのためにわざわざ移動しなければなりませんでした。この移動が手間となり、結果として情報共有が滞ってしまうことが多々ありました。また、ホワイトボードの書く欄も狭いため、十分な情報の共有が難しかったです。さらに、社内外での連絡のタイミングを掴むのも困難であり、コミュニケーションがスムーズに行えていない状況でした。

2 デジタル化による改善策

これらの課題を解決するために、「LINE WORKS」を活用することにしました。LINEはプライベートでも広く利用されており、社員にとって馴染み深く、使いやすいツールです。最初に、「使ってみたい」と他の社員に思ってもらえることを第一に導入を促進しました。運用面として、30分単位で詳細なスケジュールを記載するルールを設け、全員が「誰がいつ・どこで・何をしているか」を把握できる状態を作り出しました。外出先でもスケジュールを確認できるようになったため、日程の調整が非常にスムーズになりました。

3 デジタル化の成果

この取り組みにより、情報共有の手間が大幅に削減され、無駄な部分を排除できました。ほかの社員からも改善提案が多く出るようになり、会社全体の効率が向上しました。場当たり的な仕事から計画的な仕事への移行が進み、働き方そのものが見直されるきっかけとなりました。今後もデジタル化については、社員が使いやすいツールを活用するなどして、さらなる業務効率化を目指していく予定です。

事例紹介 ②

株式会社サトシゲ 代表取締役 佐藤 航平さんより「老舗材木店のDXチャレンジ」についてご説明いただきました。

1 当時の課題

各工場にファックスを送る必要があり、一日に200枚、年間で50,000枚を超える紙の製造指示書を扱っていました。しかも、製造指示書の変更や追加が発生するたびに紙が増え、差し替え作業が非常に手間となっていました。更に電話で進捗管理を行うことが多く、属人化していたため、全体の稼働状況が見えないという問題もありました。

2 デジタルの導入

これらの課題を解決するために、まず無料のGメールの導入から始め、2018年以降はGoogleドライブやGoogleカレンダーといったGoogle Workspaceを導入しました。2020年からは木工業界に特化した改善システムである「キーイノベーター」を導入し、全ての紙の伝票をデジタル化しました。情報をWEB上で一元管理することで、社員がPC、タブレット、スマホから内容をいつでも確認できる環境になり、全社員が同じ情報をリアルタイムで閲覧・更新できることで、工場の仕事量の可視化や指示書の変更がリアルタイムにでき、業務効率が大幅に向上しました。

3 デジタルの導入効果と労働環境の変化

製造指示書は99%ペーパー削減され、作業の効率化が進みました。さらに、工場の仕事量が可視化されることで、工場長への電話が激減し、属人的な業務も整理されました。ファックスで送り合っていた指示書もPDF化されることで鮮明に閲覧でき、工場の負荷予測や納期遅延の防止も可能になりました。結果として、残業時間が減少し、年間休日数が増加し、さらに生産量も向上しました。この要因は、内勤メンバーの負担が軽減され、他の業務を支援することになり、「多能工化」が進んだことにあります。内勤メンバーが工場や配送業務などの他の部門のどこでも支援することができ、業務全体の効率化につながりました。営業マンが午前中に営業活動を行い、午後からは工場の手伝いに入ることで、定時に帰宅できるようになる等の事例がうまれました。

4 DXに躊躇されている方へのメッセージ

新たにデジタルを導入する際、多くの経営者やリーダーは様々な困難に直面します。社内でも反対意見や批判が飛び交い、思わぬ障害が発生することもあります。しかし、成功するためにはやはりリーダーシップが欠かせません。DXを進める過程で、しばしば苦労やプレッシャーに直面することもありますが、その先には多くのポジティブな変化が待っています。特に、メンバーの成長や笑顔が見られる瞬間は、まさに努力が報われる瞬間です。困難を楽しく乗り越える姿勢も忘れないでください。自身も未だ道半ばではありますが、一緒に頑張っていきましょう。

質疑応答

基調講演と事例紹介の後には参加者からの質問に答えるQ&Aのお時間を設けました。今回のDIGILAB15登壇者への質問や感想など、幅広くご投稿いただきました。お時間の関係ですべて紹介できませんでしたが、登壇者の皆様のご厚意により、Q&A形式で講演終了後に改めてご確認いただきましたので、内容をご紹介いたします。

竹原商工会議所
田中さん
Question Answer
田中さんがイメージする産業支援機関はどんなところから中小企業を支援していくことが理想だと思われているか教えてください。 これまであらゆる業種の方へデジタル化の提案を行ってまいりましたが、すべての事業者へデジタル化を提案することは不可能であると、これまでの経験上思っております。
そこで選択と集中ではないですが、私の場合は、一番導入効果が出やすい業種として、飲食業、それも新規創業者をメインターゲットにパッケージでデジタルの導入支援(POSレジ・キャッシュレス・経理・予約管理など)を中心に行っております。
ここ最近では、人手不足解消のツールとして、モバイルオーダーシステムを導入したいとのご相談も増えてきております。
デジタルを活用した商工会議所職員の指導等によって、商工会議所の会員企業に影響を与えた事例(飲食業以外)があれば教えてください。 これまで様々な業種へデジタル化を活用したご提案をさせて頂いております。
建設業で言うと、公共工事への電子入札への対応支援、また積算ソフトの導入支援。
訪問看護事業者で言うと、スキマ時間で働けれる環境づくりとして、タブレット端末を活用し、事務所へ寄らず直行・直帰が出来る仕組みを構築し、人手確保に役立っています。
観光事業者には、キャッシュレスへの導入提案・支援などにより、インバウンドをはじめとする観光客への対応。
職場環境変更(フリーアドレス制)による商工会議所の職員の変化について、共有できる範囲で教えてください。 その日の仕事によって座る場所を変えたり、違う課の職員・パートとのコミュニケーションも固定席の時と比較して活性化しているように感じます。 また、フリーアドレスと同時に進めたデジタル化、ペーパーレス化も徐々に浸透してきていると思います。 まだまだ課題もありますが、新しいことにチャレンジすることによりマンネリ化していた職場の雰囲気も変わると思います。 今は実証的に事務所内にBGMも流し、マスキング効果や事務所内の生産性や快適性向上の検証も行ってます。
会議所内の職員の方は皆さん最初から前向きでしたか?組織内の巻き込みのコツを教えて下さい。 13年前は経営指導員のみがタブレット端末を持って業務を行っておりましたが、その後、日本商工会議所から全国の商工会議所へタブレット端末の配布があり、これを機に全所的な取り組みとしてはじめました。 全職員で取り組めることとして、まずスケジュール管理からスタートしました。 その前段として、各端末の設定や職員向けの研修など、円滑に進めるためには組織内に旗振り役の職員が必要だと思います。
事務所移転に伴う以外の部分で、なにが必要でなにが不要とかの断捨離等も実施されていますか? 各文書には保管期間がそれぞれあると思います。まずは、そうした管理をしっかりする必要があると思います。保管期間が過ぎているものは処分していく。次に、紙で保管するものと電子データで保管するものを区別し、電子データで良いものについては、紙をスキャンしてデータ化し紙は処分する。そうして、本当に必要な書類の保管スペースを把握し、必要でないキャビネットは撤去する。
当所の場合は、移転を機に大幅に書類を保管するキャビネットを削減しました。書類を保管する場所を少なくすれば、それ以上に書類が増えることは防げると思います。
デジタル化の導入当初は無料ツール(Skype等)から活用したとのことでしたが、このようなツールがあるといった情報をどのような経緯で入手していたのですか? 13年前はまったくITとがデジタルとか分からない方でした。また全国の商工会議所でどこも取り組みをされていませんでしたので、まずは様々な事業を通じて関りができた通信事業者の方やITベンダーから情報収集をしましたが、各種展示会や先進的な取り組みをされているところに直接行って情報収集をしました。いろいろな情報が必要な時に取れる仕組みを作りました。
今後取り入れてみたいデジタルツールや、要望の増えているツールがあれば教えてください。 事務所内で使う紙をさらに削減することを目的に、ワークフローシステムの導入を検討しております。
事業者とはどのくらいの頻度で分析や振り返りを行ってますか? 事業所の皆さんとは、1ヶ月~3ヶ月単位(事業所により異なります)で振り返りは行ってます。 振り返りを行うことも大切なことだと思いますが、それ以上に経営者の方がリアルタイムで経営状況を可視化できる仕組みを構築することの方が重要かなと思います。
それにより、経営者自らが経営課題を早期に見つけ、解決に向け迅速な行動が可能になると考えます。
山陽パッケージシステム株式会社
山口さん
Question Answer
自身のスケジュールをきちんと共有してくれない方もいたかと思いますが、このような方も今回の取り組みでデジタルのカレンダー共有に変化していかれたのですか? 記入の仕方を統一するのが課題でした。30分単位でどこにいるのかを記入するように社内ルールを定めるまでが大変でしたが、「予定共有をすればこういう良いことがある」ということをご説明し、ご納得いただき、運用まで達することができました。
各社員間のコミュニケーションの変化があれば教えてください 相手の先の予定を確認し、忙しくなる前に事前連絡するようになりました。相手の都合への配慮を意識的にするようになりました。
今回の実施された施策の次の一手で検討されていることありますか? 社員の所在情報だけでなく、社外の方の来社予定もデジタル管理していく計画です。
株式会社サトシゲ
佐藤さん
Question Answer
工場側の方は現場にPCがないのでタブレット活用されているイメージがありますが、内勤者はどのような活用をされていますか? 内勤者はタブレットでノートアプリを使い、製造指示書の作成を行なっています。タブレットで手書きされたPDFファイルがキーイノベーター内にアップロードされて、工場メンバーが閲覧するという流れになっています。
製造指示書を誰でも変更ができると、変更・追加・差し替え作業をおこなった場合、この変更が合っている・いない等の確認はどのようにされていますか? デジタル導入によってその確認の流れに変化はありましたか? 資料を差し替えた瞬間に、古い資料はキーイノベーター内から消え新しい資料になりますので、閲覧出来る資料=最新の資料だということになります。差し返えが発生した場合は、グーグルチャットという別のチャットアプリを使い、社員全員タブレットに報告し通知を送るという流れをとっています。
これまで紙で実施していた指示書をデジタルに変更された際、社外の請求書など紙ベースの書類等はどのような対応をされましたか? 請求書作成に関しては元々使っていた別のソフトウェアを使っており、紙の請求書のままとなっております。キーイノベーターにも請求書作成の機能はあるのですが、うちの業態とは合わない部分が多く使えておりません。製造指示書はキーイノベーター行い、請求業務は別のソフトウェアというリレー形式に今は落ち着いております。
ツールのランニングコストなど教えてください。 キーイノベーターのソフトウェア導入代、タブレット25台、工場2拠点分のWi-Fi工事代、大きくこの3点で初期投資800万円ほどでした。年間ランニングコストは約120万円ほどです。
会場でのQ&Aコーナーの様子
画像:会場でのQAコーナーの様子

「DIGILAB15」当日映像

アンケート実施結果
※一部抜粋

最後に今回のイベントのアンケート結果になります。

DIGILAB15全体満足度

「DIGILAB10」全体満足度

DIGILAB15を通してのモチベーションは向上しましたか

DIGILAB15を通してのモチベーションは向上しましたか

全体を通して、大多数の方が満足といったご回答をいただきました。

2024年度のびんごデジタルラボ DIGILAB#は今回のイベントで最後となります。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

びんごデジタルラボ事務局